令和4年9月22日の福島民友ニュースによると、福島県内の中学校、高校で、制服について、性別を問わずにスラックスを選択できるようにしている学校が増えているとのことです。また令和2年12月7日の日経電子版記事によると、「文部科学省は2015年、性的少数者の児童生徒への配慮を求める通知を出し、各教委によると、選択肢を設ける高校の増加につながった。『配慮だけを強調すると、かえって生徒が選びづらい』として、防寒や動きやすさといった利点を前面に打ち出す高校もある。」とのことです。

 

 これまでの学校では、男子生徒はスラックス、女子生徒はスカートを着用するのが一般的でしたし、今でも多数派と思われます。

 しかし、私が中学生のころからも、身近な人で私服では絶対にスカートを履かないものの、仕方なくスカートの制服を履いている人がいました。彼女は、トランスジェンダーではありませんが、女性的な服装をすることに強い嫌悪感を示す人でした。また平成13年に放送されたドラマ金八先生では、上戸彩さんが演じた性同一性障害の生徒は、制服のスカートを履くことを拒んでいました。

 

 このように、以前からスカートを履きたくない人もいましたし、ドラマの放送により、社会としてもスカートの着用を強制することについて問題意識を持っていたことがうかがえますが、学校で女子生徒がスラックスを選択できる高校や、制服を男子用、女子用と限定せずに選べるようにする学校が増えてきたのは、ここ数年のことです。

 これまで、社会が創り上げてきた、女子生徒はスカートを履くべきというジェンダー観念により、トランスジェンダーの人はもちろんのこと、そのジェンダー観念と異なる価値観をもった人も生活しづらい環境となっていました。

 制服の問題だけでなく、男子はかくあるべき、女子はかくあるべきという考え方が、他の生き方を選択する妨げとなり、生徒によっては、その成長を制限する可能性があります。今後は、学校内で男女を区別するあらゆる場面について、それが真に必要な区別であるか考え直すことにより、性別で生き方や進路の選択等に負の影響が出ない、生徒が性別に囚われず活躍できる学校環境になることを望みます。

 福島県内で性別を問わずにスラックスを選択できる学校が増えてきていることは大変喜ばしいことと思います。しかし、現在は過渡期であるため、街中で、スラックスを履いた女子生徒や、スカートを履いた男子生徒を見かけた場合、違和感を覚える方もいるかもしれません。

 自戒の念を込めてですが、もし、街中でそういった容姿に違和感を覚えたとすれば、日頃より、女性だから男性だからと決めつけて他人や自分の可能性や選択肢を狭くしていないか、他人を傷つけてはいないかと胸に手を当ててみる必要があるのではないでしょうか。

スラックス写真

令和4年10月19日
弁護士伊 藤 龍 太