皆さんは、人生で影響を受けたと思う歌はありますか。
私は、THE BLUE HERTSの「情熱の薔薇」です。特に、その歌詞の中の、「見てきたものや聞いたこと 今まで覚えた全部 でたらめだったらおもしろい そんな気持ちわかるでしょう」の部分です。
私がこの歌をよく聴いていた時期は、中学生の頃でした。その頃は、親や教師の言うことを聞くことに強い抵抗がありました。親や教師が言うことだからって正しいとは限らないと反発ばかりしていた記憶があります。
その後、法学部に進学し、法律や歴史を勉強していく中で、今まで常識や当たり前の価値観とされていたことが、時代の流れの中で(ときには大きな犠牲や努力を伴い)変遷していくこと、現在私たちを規律する法律も完全ではなく常に見直される必要があること等を学びました。今、私を取りまく法律、常識や当たり前とされている価値観は正解ではないのではないか、それでは何が正しいのか、と考えるようになりました。「ほんとに今まで覚えてきたことが実はでたらめなのかもしれない」と、常識を疑いながら勉強することがとても楽しくなり、「情熱の薔薇」が私の勉強の熱源となりました。
私が、司法試験に合格し弁護士の仕事をしているのは、この歌の影響は大きいと思っております。
かつては男性・女性の2つしかないと思われていた性のあり方について、現在では、LGBTQ(レズビアン⦅女性同性愛者⦆ゲイ⦅男性同性愛者⦆バイセクシュアル⦅両性愛者⦆トランスジェンダー⦅心と体の性が一致していない方⦆に加えて、自分の性がわからないという「クエスチョニング」と性的少数者を表す「クィア」のQを加えた、セクシュアルマイノリティ全般を表す言葉です。)や、SOGI(「Sexual Orientation & Gender Identity」という言葉の頭文字をとった言葉で、「性的指向と性自認」を意味します)の概念が顕れ、そのあり方も見直されつつあります。
このような価値観の変遷の裏に、一部の方々の多大な努力や犠牲が積み重ねられていることは想像に難くありません。
弁護士となった今は、「情熱の薔薇」を胸に、皆が生きやすい社会のため現在の常識や当たり前とされている価値観を疑問に思う姿勢を忘れないようにし、弁護士としての活動等を通じて、多くの方々が生きやすくなるように少しずつ社会の変化に貢献できるように、日々頑張りたいと思います。
令和4年1月19日 弁護士 伊 藤 龍 太