「ヤングケアラー」とは,家族の都合で,年齢や成長の度合いに見合わない形で,日常的に,家事を担ったり,病気の親・祖父母の介護をしたり,幼いきょうだいの面倒を見ている子ども(18歳未満)のことです。

 ヤングケアラーが置かれている状況は,昔であれば,「家族思いの良い子」と【美談】にされたり,【家庭の事情】と捉えられて,他人が介入することとは思われていなかったことです。

 親や親戚から,「家族なんだから助け合うのが当然」,「今は大変でも,家事や介護をやった経験は将来役に立つよ」等と,ヤングケアラーの現状を肯定する言葉を言われたり,子ども本人も「自分しかやる人がいない」と状況を当たり前だと思ってしまっていることがあります。

 しかし,小中高生の年代は,学校に行き,学習や部活動,友人と一緒に過ごす中で,「自分とは何ものか」アイデンティティーを形成していき,自立に繋げる大切な青春期であり,その時期に同級生と同じような経験をできないことは,多くの場合,子ども本人にとって精神的に辛いことです。

 例えば,学校で接する同級生と自分を比べて,「なんで自分だけ友達と遊べずに家に真っ直ぐ帰らなければならないのか」と自由な友人をうらやましく思ったり,「家族の負担のない友人に話しても分かってもらえないだろう」と孤独を感じることがあります。

 さらに深刻な場合,大人がやっても大変な家事,育児,介護等の負担を抱え込み,身体面・精神面で疲弊してしまうこともありますし,進学や就学にあたって,家庭を優先して,自由な選択ができないこともあります。

 私は,ヤングケアラーの実態は,子どもが持つ人権が守られていない状況だと考えています。同時に,子どもからケアを受けている,支援が必要な大人に必要な支援が届いていない,社会福祉の問題でもあると考えます。

 ヤングケアラーの負担を減らし,子どもが自分らしく生きることを可能にするために,どのようなことができるでしょうか。

 家庭内の問題は複雑に絡み合っていることも多いので,簡単ではないかも知れませんが,ひとつは,例えば下記のような行政のサービスや介護保険制度,障害者福祉制度,民間の有料サービスを利用して,家庭の負担を減らすことが考えられます。

 家事の負担・・・家事代行サービス

 幼いきょうだいのお世話・・・保育園,学童,ファミサポ

 家族の病気・・・通院付き添い代行,入院

 介護・・・介護ヘルパー,デイサービス,施設入所

 こういった制度やサービスと,ヤングケアラーのいる家庭と結びつけるためには,子どもや支援が必要な方と関わる大人が,常日頃から「アンテナ」を張っておくことや,ヤングケアラーから相談を受けた大人が,役所の担当課や児童相談所,地域包括支援センターなど,しかるべき機関に繋ぐ対応が必要だと思います。子ども側から相談しやすい状況づくりも必要です。

 子どもが「家族のために夢を諦めた」と言わなくて済むように,私達大人が支援していかなければならないと思います。

 今,ヤングケアラーの状態にいる方には,「やりたいことを諦めないで」,「自分が好きなことを大切にして」,「身近な大人に相談してみて」と伝えたいです。

弁護士 横山 友子