平成23年3月、東北地方太平洋沖地震と、その地震による津波で東京電力福島第1原子力発電所事故が発生しました。
同じ年の7月新潟と福島県会津地方を中心に豪雨災害が発生しています。JR只見線では橋桁が流出し鉄橋が崩落するなどの被害が発生して、その後一部区間は復旧したものの、現在も会津川口駅 - 只見駅間は不通のままです。

40年も前に、友人と二人で冬の只見まで出かけてスキーをしたことがありました。本当の豪雪地帯で、駅前から宿まですべてが真っ白に見え、どこにスキー場があるのか分かりませんでした。映画にもなった真保裕一原作の『ホワイトアウト』のモデルとなった奥只見ダムは、さらに奥に行ったところにありますが、まさに白一色の世界でした。

先日、その只見線沿線に出かけました。只見線は、令和4年10月1日には全線開通の予定とのことで、既に列車の試運転が始まっていて、鉄道ファンの方の姿が沿線のところどころにみられました。この11年間、存続が危ぶまれたこともありました。

車で会津若松から坂下(ばんげ)を過ぎてしばらくして左に曲がると、只見川が現れます。川は、道路と線路と網を編むように何度も交差して行きます。少しずつ標高をあげていき、川を上っていきます。只見川は南会津の深い山々から水を集めて濃い緑色をしていて、留まっているかのようにゆっくりと流れ、一人でいるとその深い緑に吸い込まれてしまいそうでした。

途中、看板を見つけました。何度か只見川には来ていましたが、以前には目に入らなかったようです。

「霧幻峡」

川の際まで迫る森と、その森と山、雲の形までもはっきり鏡のように映しだすおだやかな水面。そこに川霧がゆっくりと漂っています。
実際にその場に立って自分の目で見てみると、その呼び名しかないなと感じました。

今回は、霧幻峡のほかにも、只見線沿線の、煮ても焼いても美味しい甘くてホクホクの奥会津金山赤カボチャ、少し離れて、昭和村の、軽くて、しなやかで涼しい伝統のからむし織、南郷の、甘みだけでなく郷愁の味がする南郷トマト、希少なもち米四段仕込みのお酒・花泉もいただき、曇りで天体観察はできなかったものの木の香りのするホテルで山に抱かれた露天風呂も堪能し、ゆっくりと奥会津の大自然に触れて過ごした、少し遅い夏休みでした。今度は列車で行ってみたいかな。

機会がありましたら、いや、是非機会を作って、霧幻峡のある奥会津にお出かけしてみてはいかがですか。

弁護士 渡 邊 真 也