当事務所では、交通事故に関する損害賠償請求について相談や依頼を受けることがあります。

交通事故の場合には、主に、過失割合(交通事故を起こした責任について、当事者間で、どちらがどの程度責任があるのかという問題)や損害の有無・大小が問題となります。過失割合は、基本的には交通事故がどのように起きたか、どういう事故であったか(「事故態様」といいます)によって、決められることとなります。

事故態様に対する認識について、当事者間で相違がなければ特に問題がありませんが、事故当時一方の車両が停止していたか否か、一時停止をしたか否か、信号が青信号であったか否かについて、認識が異なることは多くあります。その場合に、ドライブレコーダーは事故当時の客観的状況を記録していることから、ドライバーが安全運転をしている限りは、ドライバーにとって強い味方になります(逆に無理な運転をして交通事故を起こした場合には、その結果も記録されることとなります)。

事故態様に対する認識が当事者間で相違する場合には、事故現場の状況や、事故に遭った車両の損傷の部位や程度等を判断材料として、過失割合について交渉をしたり、交渉でまとまらない場合には、訴訟において、事故態様がどのようなものであったか証拠から立証することになります。

訴訟では、交通事故を目撃していない裁判官が、事故現場の状況や車両の損傷状況等の証拠から事故態様を認定することとなります。証拠による認定には限界があり、必ずしも納得のいく事故態様が認定されるとは限りません。少なくとも、事故態様について鋭く認識が対立する交通事故については、どちらかが満足する認定がされるということは、他方にとっては納得のいかない認定になるということです。

極端に言えば、あなたがある店舗の駐車場で駐車していたところ、あなたの車両に、突然よそ見運転をしていた相手方車両がぶつかってきた場合、訴訟でその通り認定されるならば、その交通事故の責任はすべて相手方にあるということになります。しかし相手方が事故当時、あなたの車両は走行中であったと主張し、あなたの方で、あなたの車両が駐車中であったことや、相手方車両が一方的に衝突してきたことを証拠により立証できない場合には、あなたの方でも一定程度、その交通事故について責任を負うこととなる可能性があります。

交通事故に備えて、任意保険に加入することはもちろん、万が一の事故の記録をしておくためにドライブレコーダーの装着もぜひともご検討ください。

令和2年10月28日

弁護士 伊 藤 龍 太