3組に1組が離婚すると言われる昨今、ひとり親が子どもを育てていく上で経済的支柱となるのが、「養育費(よういくひ)」です。

 養育費は、子どもと離れて住む親から、子どもを現に育てる親に対して、支払う「生活費」のことです。
 離婚時に、子どもの父母で、金額(こども一人につき「月額何万円」)や支払時期(「毎月月末」等)、始期・終期(「離婚した月から」「子どもが20歳になる日の属する月まで」等)、を話し合い、取り決めることが望ましいです。
 一般的に、子どもが自立するまでという長い年月の支払いを約束するものですので、取り決めの内容は正式な「文書」にしておいた方が良いと言えます。

 この「文書」とは、
①父母間の「合意書」「契約書」「念書」「覚書」等の私文書
②公証役場で公証人が作成する「公正証書(こうせいしょうしょ)」のうち「強制執行認諾約款付(きょうせいしっこうにんだくやっかんつき)公正証書」
③家庭裁判所が作成する調停調書、審判書、判決書等(いずれか1点)。
等を指します。

 ①~③のうち、支払義務者が支払いを滞らせたときに、強制執行によって財産を差し押さえる効力があるものは、②③です(ただし、①も、別途民事訴訟を提起すること等によって③の「判決書」を得ることができる場合があります。)。
 このような差し押さえる効力がある文書を「債務名義(さいむめいぎ)」と言います。
 「債務名義」を持っていると、万が一養育費が不払いになったときに強制執行の手続をすることができます。

 ところで、②や③を作成するためには、②公証人に対する法令で定められた手数料(一般的には数万円程度)や、③家庭裁判所に対する申立費用(収入印紙等数千円程度)がかかります。
 最近、これらの養育費に関する「債務名義」を取得する際の費用を、行政が支援します、という取り組みが増えています。

 ひとり親家庭等への支援施策に関する取り組みとして、厚生労働省が公表している「養育費の履行確保等に関する取り組み事例集(令和4年3月)」によれば、既に、全国で30を超えるの市区町村が公正証書等作成費補助の実施を行っています。
 自治体によって、助成の上限金額(3万円、5万円等)や助成の対象(弁護士費用も含むか等)が異なりますが、おおよそは、いったん「養育費の取り決めに係る経費」を負担して公正証書等を作成した後に、自治体に対して補助金の交付申請し、自治体から交付決定を得て、補助金を受給する、という流れのようです。

 福島県郡山市も、令和4年から「養育費確保に係る公正証書作成等支援事業」(の実施)を開始しました。
 子どもを養育している親で、令和4年4月1日以降に「債務名義」を取得するための経費を負担した方が対象で、上限5万円とのことです。
 公正証書作成手数料、家庭裁判所の収入印紙代、郵便切手代のほか、手続に必要な戸籍謄本等、添付書類を取得するのにかかった経費も、助成対象になります。
 債務名義を取得してから6か月以内に補助金交付申請を市役所の子ども家庭支援課にする必要がありますので、期限にご注意ください。

 養育費は、子どもの食事や、衣類、学校用品等、日常生活や学びに直結します。離婚した元夫婦間は必ずしも円満な関係ではないかも知れませんが、子ども達のためには、まずは約束通り支払われることが一番大事です。その上で、ひとり親側も、上記の補助金制度等を利用して、支払われない場合に備えることをご検討頂ければと思います。

 養育費や公正証書の作成、家庭裁判所の手続についてもっと詳しく知りたい方、相手との話し合いがまとまらない、相手と直接話し合いをすることができない方等お困りの方は、弁護士にご相談頂ければ、お一人お一人に合わせたアドバイスをさせて頂くことができます。
 弁護士費用についてご不安な方は、法テラスの民事法律扶助を利用することでご負担を軽減することができる場合もありますので、お気軽にお問い合わせください。

弁護士 横山友子