我が家のリビングには「やられてイヤなことはやりません」と手書きの張り紙をしてあります。
些細なきっかけから子ども達のきょうだい喧嘩が始まるので、相手の気持ちを思いやってもらいたいと思い(そして、家の中で静かにしてほしいと思い)、私が書きました。
張り紙の効果のほどはさておき、日々業務で接する法律問題の中で、「やられてイヤなこと」をやった(やられた)がために法的紛争に発展しているものは、とても多いです。
各種犯罪、いじめ、差別、DV、虐待、ストーカー、セクハラ、パワハラ、モラハラ、SNSによる名誉棄損・・・
「やられてイヤなこと」の中には、単に不快と感じるに過ぎないものもありますが、深刻な権利侵害が生じるものもあり、その場合には法的対応が望ましいと言えます。
労働者と使用者等の契約関係のある間柄であれば、「安全配慮義務(あんぜんはいりょぎむ)」違反の責任が問題になることもありますが、大半は、「不法行為(ふほうこうい)に基づく損害賠償(そんがいばいしょう)」として加害者に対して金銭の支払いの請求が検討されることになります。また、犯罪行為であれば、警察や検察への相談、被害届提出、告訴・告発も検討されるべきでしょう。
示談や和解の中で、加害者が賠償金を支払うほか、被害者に対して謝罪をすることで一応の解決に至る場合もありますが、賠償金や謝罪があっても、被害者が受けた苦痛を無かったことにすることはできません。取り返しのつかない場合も多いのです。
法的紛争に発展してしまうことを防ぐ観点からも、そこまで行かずとも、人間関係を円満に築き、社会生活を円滑に送るためにも、「やられてイヤなことはやらない」が対人関係の基本だと、弁護士・親として強く思います。
また、例えば、私にとっては「やられてもイヤではないこと」であっても、相手にとって「やられてイヤなこと」である可能性は大いにあります。逆もまたしかりです。
特に、ライフスタイルや価値観が多様化した現代においては、見聞を広め、想像力を働かせ、また、相手とコミュニケーションをよく取ることが、より一層大切になっていると思います。
以上
弁護士 横山 友子