遺言、書いておいた方がいいですよ、と言われたことはありますか?
弁護士という職業柄、いつも相談者、依頼者の方にそう言っております。今回のコラムは弁護士と知人Aさんとの会話で遺言の注意点を書いてみます。
弁護士「Aさん、退院おめでとうございます。よかったですね。一時は心配しましたよ。ところで、奥様が、『夫が死んだら、どうしよう。遺言の話なんて聞いていないし』と心配なさっていましたよ。」
Aさん「遺書なら書いてあります。全文自筆で日付を書いて自分で署名押印すればいいんですよね。机の中にカギをかけてしまってあるから大丈夫です。」
弁護士「机のカギは誰かに預けてるんですか?」
Aさん「そんなわけないでしょう。自分で持ってますよ。大事なものが入っているからだれにもカギのありかは言っていません。」
弁護士「遺言を机の中にしまってあることはご家族には伝えてありますか?」
Aさん「いいえ。だって、生きている間に見られたくないことも書きましたし。」
弁護士「Aさん、万が一、あなたが突然亡くなったとすると、あなたの遺言は意味がないことになるかもしれませんよ。」
Aさん「えっ!」
弁護士「だって、Aさんが遺言をして、その遺言が机の中にあることは誰も知りませんから、あなたが突然亡くなると、誰もあなたの遺言を見つけられないかもしれませんよね。いずれ家族の方が見つけるかもしれませんけど、例えば、葬儀は音楽葬にしてほしいということを遺言に書いてあったとしても、葬儀までは遺族の方々はバタバタして、机の中まで見ないかもしれません。そうすると、Aさんの望んでいた音楽葬はできないかもしれませんよ。」
Aさん「なるほど・・・。じゃあ、どうしたらいいんですか。家族には事前に伝えたくないことも遺言には書いてあるんですよ。」
弁護士「葬儀のことなら、遺言でなくてもご家族に伝えておけばいいですよね。生前には伝えたくないことを遺言にされるのでしたら、自筆証書遺言でもいいのですが、遺言をしたことと保管場所はご家族に伝えておいてはどうでしょう。あるいは、公正証書遺言という方法もあります。これだと、公証役場で保管してくれますから、ご家族に公正証書遺言をしたと伝えておくか、遺言の証人になってくれた人に、『自分が死んだら〇〇に公正証書遺言があることを伝えてほしい』と言っておけばいいですよ。」
遺言は、書くことも大事ですが、自分の死後、すぐに見つけてもらうことも必要です。
終活のご参考になれば幸いです。
弁護士 渡邊真也