私は、これから社会人になる学生の方たち向けに、社会人になるに当たっての心構えに関する講演をすることがあります。

 そのときに話す内容の一部ですが、できる限り、他人と交流しましょうということを話します。その他人は、同じ職種も、違う職種も、同年代も異なる世代も含め、いろいろな人と交流しましょうと話します。

 なぜこんな話をこれから社会人になる方々に話すかといえば、私が当事務所に入所してすぐ、渡邊真也弁護士に言われたからです。

 弁護士は、様々なイベント等で懇親会の機会が多くあります。初めはなるべく出席して、いろいろな弁護士と話してきなさいと言われました。

 私は、あまり人とのコミュニケーションが得意という意識はなく、正直、知らない先輩弁護士しかいない懇親会に出席するのはものすごいストレスでした。いざ出席しても、最初の方は、同じテーブルに座った近くの方とお話する程度で、他のテーブルの方に話に行くことはあまりできませんでした。しかし、懇親会への出席を続けていくうちに、周りの弁護士も私のことを覚えてくれて、よく話しかけてもらえるようになり、私からも、話しかけられるようになりました。

 今では、懇親会で他の弁護士といろいろなことを話すのが楽しみになりました。それだけでなく、他業種の面識のない方々が参加するイベントに誘われて参加することも全く苦にならなくなりました。

 そうすると、仕事をする上での悩みや苦労を共感でき(もちろん依頼者等の秘密は守ったうえで)、またいろいろな知識を得やすくなり、仕事を円滑に進めることができるようになりました。

 今思うと、気が乗らないながらも、懇親会に出席し続けて本当に良かったと思います。

 今は、テレビでも、サブスクリプションで観たいものを観たい時に観ることができ、聴きたい音楽を聴きたいときに聴ける時代です。携帯でネットニュースを見ても、携帯が学習し私の興味のありそうなニュースばかり表示されます。

 現代社会は情報やコンテンツがあふれていると言われますが、私の前に提示される番組や音楽、ネットニュースはとても限られたジャンルの、何か既視感のあるものばかりです。自分がよく知らないジャンルの情報は積極的に知ろうとしないとその存在すら把握することが難しくなりました。

 これから新社会人になる方々に、いろんな人と交流しよう、懇親会にもできる限り参加しよう、などと言うと、古臭い昔の考えと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかしこんな時代だからこそ、意識的にいろんな業種やバックボーンを持った方と交流を持たないと、限られた情報や価値観しかないと錯覚し、人間としての成長もできなくなってしまうのではないかと思います。

 私は、弁護士8年目となり、社会人になってからしばらく経ちますが、今後も、いろんな人との交流をつづけ、いろんな情報、価値観に触れたいと思います(今でもちょっと気が乗らない懇親会はありますけどね、、、人間だもの)。

                                令和6年7月5日

                             弁護士 伊 藤 龍 太