連日猛暑が続き、熱中症で搬送される方、お亡くなりになる方が増えていて、まさに「命の危険」がある暑さだと言えます。
屋外の活動、作業が危険であることは勿論、屋内でも適切に冷房を使用しないと危険があります。
皆様、十分ご注意ください。
熱中症が裁判で扱われた裁判例を判例検索システムで検索すると、
(1)高温な自動車内や室内等に乳幼児や高齢者等を放置
(2)保育所等の施設内の事故
(3)学校の部活動等での事故
(4)労働災害、公務災害
といった類型が見受けられます。
重い後遺障害や死亡に至ったケースが中心で、どれも痛ましい事故です。
(1)は、例えば、親がパチンコに行く間、自分の子である乳幼児を自動車内に置き去りにし、乳幼児が熱中症で死亡したケースです。保護責任者遺棄致死罪、または業務上過失致死罪などに該当するとして、刑事裁判で有罪となる例が見られます。
(2)は、保育所の宿泊保育中に乳児が熱中症になり死亡したケースで、乳児の遺族が市や運営会社、園長に対して民事裁判で損害賠償を求め、認容されたケースです。
(3)は、例えば、中学校の運動部の部活動中に熱中症を発症し、脳梗塞になり、後遺障害が残ったケースや、体育の持久走の後熱中症になり、意識障害やせん妄状態になって校舎から転落死したケースで、学校設置者である市の民事損害賠償責任が認められています。
(4)は、倉庫内で作業を行っていた労働者や、学校の屋外で除草作業をしていた中学校教諭が、熱中症で死亡した件等です。雇用主等に対する安全配慮義務違反(使用者は、労働契約の付随義務として、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負います。)を理由として民事損害賠償請求を行う訴訟等があります。
(1)や(2)の乳幼児や高齢者、障害者、病気の方は、体温調整機能が十分に働きにくい等の身体的要因もありますし、(3)教員の指導に従う学校の児童・生徒や(4)雇用主の指示に従って業務に従事しなければならない労働者等は、自分から体調の異常を伝えることができなかったり、自分の判断だけで熱中症予防対策(涼しい場所への退避、休憩、水分・塩分補給等)を取ることが困難です。
保護者等が負う「保護責任」や学校等や使用者が負う「安全配慮義務」は、弱い立場の方の生命や健康、安全を守るために課された法的義務であると言えます。
今夏、新型コロナウィルス感染拡大防止のために行われていた制限がほぼ撤廃され、夏祭りやレジャーなど数年ぶりに盛り上がりを見せていますが、楽しみつつ、自分が守らなければならない人の熱中症予防対策にも十分注意を払いたいと思います。
(参考)
⚫環境省「熱中症予防情報サイト」
⚫厚生労働省「熱中症を防ぐために知っておきたいこと 熱中症予防のための情報・資料サイト」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/index.html
弁護士 横山 友子